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雅々が泉ちゃんちの荒魂くん率いる鬼くん集団に初対面する、永久保存版な小説!
うちと泉ちゃん家の交わりが一発で分かるし、鬼くんたちの情報もつめっつめ!!
逐一丁寧な表現と描写で、今後何か分からなくなってもこれさえ読めばぶわっと記憶が修復されちゃう!!舞台背景や個々の特徴や関係性もよく分かったぞう!^o^

素敵に長いので畳みます~


「話には聞いてたけど、でっかいな」

目の前に聳え立つ権現造の建築様式は見るものを圧巻する大きさで、巷で大江山の場所を尋ねた際には龍宮城の様だと言われていたのも頷ける。
京の都 大江山頂上付近、そこに彼女は居た。

名は、雅々。万冥衆に所属する紅一点である。
さらりと靡いた銀の長髪に真紅色の瞳、そこから流れる様に描かれた左頬の紋様は美しく、彼女の凛々しさを物語っている。
本来、雅々達が拠点としているのは日ノ本である本土から微かに目視出来る距離の離島だ。
そんな彼女が何故、本土の大江山に足を踏み入れているのか。―――事の始まりは、数日前に遡る。


「なァ、ちょっくらオツカイ、頼まれてくんね?」

雄々しく端整な顔立ちに、燃えるような赤髪を束ねた三つ編みが良く似合うその男の名は銀、雅々の兄貴分である阿毘の好敵手であり、気高き神獣白虎である。
この男が意気地な笑みを浮かべて甘えた口調で自分へお願いをしてくるなど、大抵ろくでもない事を企んでいる時だ。雅々の眉間に皺が寄る。

「…なに」
「んな露骨に嫌そうな顔すんなって、ちゃんとしたお仕事ダヨ」

聞けば、本土――京の都の外れに聳え立つ大江山に住む鬼、酒呑童子 荒魂に届け物をして欲しいとの事であった。
それ位自分で行けと言えば、面白がっている様子であれやこれやと理由を付けて拒み、頑なに譲ろうとはしなかったので、雅々は折れる形で溜息をついた。

「阿毘兄貴に聞いてよ、俺だけで判断出来ない」


嘩叉們組初代頭首の銀と大江山頭領の大鬼である荒魂が古くからの取引相手でお得意様だという話は、以前行われた宴の席で小耳に挟んだ事があった。
荒魂とはどんな奴だと誰かが問えば、「収集家だの美食家だの、幅広い分野を器用にこなしている忙しい人間だ」と、銀は笑っていた。かと思えば、またある日には「考えが読めねェ、どこまでも食えない鬼だ」などと眉間に皺を寄せていたのだから、相当癖のある奴なのだろうと当時は思ったものだ。
対して、人でもあり鬼でもある紫苑は苦虫を噛み潰したような表情を見せ、普段の彼からは想像もつかない程の殺気を放ちながら「そんな奴の事は知らなくていい」とさえ言っていたし、義母妹の結もどこか余所余所しく、その名を聞くと気まずそうに目を逸らすのである。

紫苑と結――この兄妹は雅々達に古くからの馴染みであり、肩書きで言うなれば、本土の京都にある桜都稲荷大社の出仕と巫女だ。
時折こうして互いの家、或いは銀宅を行き来しては宴会を開いたりと、雅々達にとっては家族ぐるみの仲と言っても過言ではない。二人は彼女を大層可愛がっているので、男世帯の中で先陣を切って戦いに参加している事を尊重する反面、心配でならなかった。

そしてそれは今回も同様だ。酒の席で銀が「大江山に雅々を遣いで行かせる」と口にすれば、それはもう収拾がつかないのではないかと周囲が焦りさえ感じた程だった。
その場に居合わせた紫苑は全力で阻止しようと声を荒げて反対し、結に至っては、手放すものかとでも言うように雅々の手を強く握ってきた。
当の本人はというと、状況を完全に把握しきれておらず、只々立ち尽くす事しか出来なかったので、そっと男二人のやり取りに耳を傾けながら、表情こそ変わらないがどこか不安気な様子の彼女の手を握り返した。

「(あんな紫苑と結姐、珍しいよなぁ)」
「「おい貴様、何者だ」」
「あ、やべ」

当時のやり取りを振り返っていると、雅々の姿に気付いたらしき門前にいた阿吽の鬼に槍を突き付けられていた。

「えっと、銀からの荷物を届けに来たんだけど、荒魂って人はいる?」
「貴様、我らが首領の名を気安く…!」
「荒魂様は外出されているので此処には居られない。日を改めて出直す事だな」

飄々とした表情で答える彼女に鬼達は厳しい口調で言い放つ。
揉め事にでもなったら御免だと、この場で受領書だけでも受け取っておこうかとも考えたが、仕事である以上は任務を果たさなければならない。――さて、どうしたものか。雅々が渋っていると、潜戸からひょっこりと女性が顔を出した。

「あら、女の子だわ」「まぁ、本当」「あのお方がまた連れ帰ってこられたのかしら」「私なんて、もう半月も床を共に出来ていないのに」

「(…どこかの城のお姫様か?連れ去られてきたのかな。それにしては、活き活きしてる気も…)」

何事か、と興味津々に潜戸から顔を覗かせている女性達は、女中姿をしてはいるものの言葉遣いや仕草には何処か品があり、美しく若々しい娘ばかりだ。
心此処に非ずで溜息を吐くその表情から垣間見えるのは、恋慕の情を抱く乙女そのものであった。

「(何か勘違いされてる…?) 俺は届け物を預かってきただけだから。本人からの受領書を貰えないと仕事が終わらないんだよ」

それを聞いた彼女達は「なんだ、そうなの」と表情を明るくするや否や、それなら中で待てばいいと潜戸を出て提案する。その言葉を聞き、誰よりも焦りを露わにしたのは、他でもなく阿吽鬼であった。

「貴様ら!何を勝手な事をしている!!」
「こんな所で油を売っていないでさっさと持ち場に戻れ!!」
「「喰われたいのか!!」」

頭領である酒呑童子とその右腕達が不在の今、この地を守るのは自分達の役目だというのに、そう易々と開門して中へ入れてしまえば信用を失いかねない。それだけならまだ良い方だ、喰われてしまうやもしれない。何としても阻止せねば、と。

「…はぁ?」
「どうしてあんた達の言う事を聞かなきゃならないのよ」
「酒呑童子様に許可されなきゃ何も出来ない下っ端のくせに」
「ああ、早くお帰りになって…荒魂様」

「「ぐ…っ」」

圧をかけて叱咤をするも、彼女達の人間らしからぬ圧に押し負け肩を落とす阿吽の鬼を後目に、女性の圧倒的な強さを目の当たりにした雅々の脳裏には、出発直前の際にした銀との会話が再生された。

『なぁ銀、酒呑童子ってどんな鬼なの?』
『…俺はまだ若ェから当時の事は知らねー。けど、平安中期から配下の鬼共連れて、京を荒らし回って、美人の姫さんそこら中から掻っ攫って抱いて、扱き使って飽きたらバリバリ喰ってたらしいぜ』
『何だよそれ女の敵じゃん』
『おー、ソレだな。最低だろ』
『(どの口が言うんだ)』

情報が食い違っている事に困惑を隠せない雅々は、彼女達に流されるがまま門の中へと歩みを進めるのであった。

 


屋敷の本殿らしき広い室内は華やかな装飾品で覆われており、灯りに反射してより輝きを増している。
配下の鬼達の視線が痛く刺さる。天下の大鬼の配下なだけはあり、下っ端と言えど実力はその辺の妖怪等とは比べるまでもない事は明らかだ。

そんな中を臆する事なく歩く女中達に、雅々は感心しながらも彼女達がここへやってきた経緯の話に耳を傾けた。
「屋敷を襲撃された際に一目で恋に落ちたので縋り付いてここまできた」だの、「酒呑童子を匿っていた際に退治しにやってきた天皇配下の四天王を自分達で追い払ってやったら嫁に迎えてくれた」だの、耳に入る情報はどれも勇ましい武勇伝ばかりであったのだが。
そこまで女性に好かれている酒呑童子が何故悪鬼とされているのか…雅々には疑問が残ったが、屈託のない笑顔を見せる彼女達にとっての居場所なのだろうとつられて笑みが零れる。


―――と、その時。

ピリ、と廊下の先から圧を感じ、現実に引き戻される。それは配下の鬼や女中も同様で、先程までおちゃらけていた彼女達の表情は今や別人の様。
足音がひとつ、ふたつ、みっつ、―――否、まだ数人は居るのだろう。


「その子は大事なお取引さんとこのお気に入りやから、ぞんざいな扱いしたらあかんよ」


廊下の角を曲がり、ぞろりと現れた集団の先頭をゆっくりと歩いてくる男が口を開くと、ピン、と張りつめた空気が漂う。

「ただいま」
「お、お帰りなさいませ!」

「首尾はどないなっとんの?」
「っ、はい、沙華様…!上々に御座います!」

「なんどいやあの人肉、むつこかったわあ 」※むつこい…脂っこい、しつこい
「勿忘(ワスレナ)様、返り血が…!直に新しいお召し物をお持ちします!」

「食べ過ぎでずつないよーっ!お風呂焚いてー!」※ずつない…苦しい
「星鴆(シンジェン)様、湯浴みの準備は整っております!」

「…あの肉はもむない」※美味しくない
「せやったなぁ」
「じ、靭(ジン)様、烏帽子(エボシ)様…口直しの夕餉は如何致しましょう?」

配下の鬼達は瞬時に片膝を突くと、彼らの名を呼び、希求憧憬の情を走らせながら世話を焼いていく。
かつては京の都を配下の鬼共を率いては荒らし回り、人を喰らい、獣を喰らい、魍魎までもを喰らい、悪行の限りを尽くしたという悪鬼盗賊集団――全ての鬼が渇望したであろうその力、地位、名誉、そして自由を誰よりも先に築き、確立させたのが彼らであるが故か否か。
その崇拝者達は配下元だけに止まらないというのだから恐ろしい。

「(すっげー既視感だ…)」

はて、それは何であったか。
雅々は首を傾けて考える。身近の人外達がかつて所属していた組も似たようなものではなかったか。
元初代頭、銀の破天荒で雄々しき姿に心酔した部下達の崇拝振りが脳裏に浮かび、どこの組も似たようなものなのかと苦笑に似た表情で彼らの様子を見つめていると、ぱちり、と一人の鬼と目が合った。

「何やこのチビ助!」
「う、わ」

その鬼はズカズカと歩み寄ってきては雅々の頭を鷲掴みにし、わしゃりわしゃりと髪を掻き乱した。

「じ、雀槍(ジャクソウ)様!その娘は荒魂様のお得意様の…っ」

先程の話を聞いていなかったのだろうか。慌てて世話役らしき配下の鬼が制止しようと試みるが、雀槍と呼ばれた鬼は、わはは、と豪快に笑って自分の物かの様に接してくる。
突然の事に呆然とする雅々ではあったが、兎にも角にも、先ずは役目を果たさなければと口を開いた。

「えーっと、俺は…」

「えっ、何々?」
「ん?客か?」
「へぇ、女の子やん」
「珍しいな。おい雀槍、むやみに触ったらあかんていつも言うてるやろ」

その声につられる様に、ぞろぞろと鬼達は雅々を取り囲んで興味津々に見つめる。挙句、一方的につらつらと話し始めたものだから、発しようとする言葉も遮られてしまった。

「雀槍」

そんな時、金棒を担いで覇気を放ち怒り立っていたのは、最前を歩いていた男…ではなく、沙華と呼ばれた女型の鬼であった。

「ひぇッ、な、何すか沙華姐さん」
「鬼の礼儀は?」
「ぜ、絶対っスね…すんませんっした!!」

雀槍は掴んでいた雅々の頭を急いで離し、目を泳がせながら降参とでも言うかの様に両手を上げた。
そんな様子を笑みを崩さずに見ていた先頭の鬼はけらけらと笑うと、目線を雅々の周囲に居た女中達へと向ける。

「…さて。君等がこの子を中に入れてくれたんやってな」
「「は、はい…!」」
「おおきに。せやけど阿吽が怖がっとったよ?もう少し優ししたってな、その方が君らもかわええよ」
「「!!」」
「後で可愛がったるから、持ち場戻り」

頬を染め、黄色い声と共にそそくさと持ち場へ戻る女中達を見送るや否や、男の目線は雅々へと移る。


「君が雅々ちゃんやね。遠路遥々、お遣いおおきに」


恐らくこの男なのだろう。笑みを浮かべたまま身を屈め、落ち着いた様子で話しかけてきたこの男こそが、大江山の大悪鬼首領 酒呑童子 荒魂なのだと直感する。
普段から、自身の所属する組頭である阿毘を筆頭に、彼の好敵手である白虎の銀、麒麟の雷覇といった面々に囲まれているので、荒魂の圧はとても軽いものに感じられた。その一方で、物腰柔らかな表情や方言とは裏腹に内が見えない不気味さが伝わり、雅々は本能的にぶるり、と小さく身震いをした。

「…?(結姐の匂いがする…)」

加えて、雅々にとって姉的存在である結の匂いが何故この男から漂っているのか。
男女の仲にしては、あの時の彼女の表情や仕草はお世辞にも幸せそうには見えなかった。そして、何よりこの男から感じるのは彼女の ”纏っている” 匂いではなく、血のそれだ。

「結ちゃんは、元気にしてはる?」
「!」

感潜っていると、笑んだままの細く切れ長の目が開かれた。
それはじっ、と雅々を捕らえる。見透かすように、見通すように。じわり、じわりと圧が強くなるのが分かる。
阿毘や銀達が放つ圧倒的な強さ、恐怖とはまた違う。執拗に、執念深く。巻き付かれて、絞めつけられる強さが増していく様に体が動かなくなっていくので、毒でも食らった様な錯覚にさえ陥る。荒魂が割れた舌先を見せながら舌なめずりをすると、しゅるり、と音がした。

「(まるで蛇だ)」
「君 ”も” 美味しそうやね」

ここへ来る途中、不思議に思っていた。
匂いはあれども、この山に住まう狼の気配はない。本来狼というものは群れを成して生活し、同じ所に止まる事はしない移住する生き物だ。
この山には多くの同族は見当たらない。習性通り移動したのか、それとも。―――この男の目を見た瞬間、ああそうか、と。彼女は伏し目がちになり、唇を噛み締めた。

この山に居た彼らはきっと喰われたのだろう。そして、彼女――結も。
それは前世の事であったか、いつの話であったかまでは分からないが。そうであれば、この男の名を聞いた紫苑があそこまで憤怒するのも腑に落ちる。
直接の関わりは無くとも、やはり心はちくりと痛んだ。しかし、これ以上読まれる訳にはいかないと再び荒魂を見つめ直す。

「気丈なお嬢さんやね、嫌いやないよ」

荒魂は雅々の顎下をそっと撫でた後、手に持っていた荷物を受け取り受領書の押捺先を見つめて目を細めてにんまり笑う。
腰に掛けてあった”酒”と書かれた瓢箪の蓋を外してごくり、と喉を潤したかと思えば、深く息を吸い込み、そして息を吐く様に炎を噴出した。
ボッ、と大きな音を立てて炎は荷物を焼き尽くしていく。何事か、と目をぱちくりさせる雅々を始め、興味津々でその背後に寄ってくる鬼達を横目に、まるで飛んで火にいる何とやらだ、と呆れ顔を見せる沙華の姿がそこにはあった。

すっかり炭へと変貌してしまった包み紙が、ボロボロと床へ落ちてゆくのを気に留める様子もなく、荒魂は手に納まっている目的の物をじゃらり、と見つめながら、「確かに」と呟いて受領書を雅々へと手渡す。

「この受領書、ちょっとした細工がされとったんや。押捺の部分は判でもなければ署名でもない、火やないと呪詛返し食らってまう様にってな」
「すご…紙は燃えてないんだ…」
「君ん所の銀クンが遊び心で作った受領書やからね」
「えぇ…何でそんな面倒な事…。というか、シロは俺ん所の奴じゃないよ(あいつどういう説明の仕方してんだ…!)」
「おもろい事してくれはるから、俺も退屈せんで済むわ」

愉快愉快、と笑う荒魂を見つめていると、不思議な感覚に見舞われる。
初対面にも関わらず、何処か懐かしさを感じさせる匂い、銀や阿毘とはまた違う影響力に当てられて、雅々は恐怖すら薄れていくように思えた。

「"萃自疎在"」
「え」
「あんた、人間で山犬に育てられたんやろ。鼻が利くって聞いた」
「あ、うん」

女型の鬼である茨木童子、沙華の声で我に返る。

「荒魂が散らしとる気は"萃自疎在(スイシソザイ)"。相手の欲する匂いや雰囲気を纏って、周囲を酔わせて集める力を持っとる。あんたは鼻が利くから、間近におらんと一定の距離取らな余計影響受けるで」
「あぁ、だから今…クラクラすんなーって思った」
「あんたが女中と同じ末路辿ってもええ言うんなら、うちは止めへんけどな」
「?それってどういう…」
「麻薬と同じ、言う意味や」

沙華の言葉で、雅々の思考は停止する。
――そう、荒魂は彼女達にとっての居場所だと思っていた。否、そう思いたかっただけなのかもしれない。
女中達は、本当に荒魂の人柄に惚れ込んでいるのかもしれない。しかし所詮は鬼と人。如何に恋慕の情を抱こうとも、散らす気に当てられ、脳を侵され、気付いた時には既に後戻りは出来ない。
愛しさからも力からも離れる事すら出来ず、次に床を共にする日を今か今かと待ちわびて、独占欲や嫉妬で心を掻き乱され、苦しい苦しいと嘆き、荒魂にいっそ喰らうてくれと懇願する――これが、真実。

「―――」
「荒魂もうちも元は人の血が入ったまがいもんや。生粋の鬼共に比べて余計な情が詰まっとる分、女中らの思いに同情する事かてある」
「…俺は、拾ってくれた兄貴が望むなら何だってするよ、そこが俺の居場所だから。でも、よくはわかんねーけどさ…想う事ってそんなに辛いのかって驚いた」
「けど女中同士で井戸端会議出来るような器量のある奴らもおるし、それが出来ん奴らかって仰山おる。ほんま、めんどい事で頭抱える…これやから人間は嫌いやねん」
「ははは…」

腕を組みながら眉間に皺を寄せて愚痴を言う沙華を横目に、意気揚々と荒魂の話をしていた女中達を思い出し、雅々は苦笑する事しか出来なかった。
そして、ふ、と脳裏に一人の男が浮かぶ。

「…あ、でも頭抱えてる元人間の鬼なら、俺知ってるよ」
「―――あんた、紫苑の何なん?」
「え、よく分かったね。紫苑の事知ってるんだ?」
「!!……べ、別に…!あんな奴知らんわ!ただ、同じまがいもんで…五本角鬼神なんかそうおらんし…!!」
「もしかして、紫苑の事好きなの?」
「アホか!んんんんなわけないやろっ!!」

図星である。
これでもかと朱色に染まっていく頬に泳いだ目、取り乱す姿を見て、焦点が一致した。人間嫌いだと嘆く彼女が自分へ声をかけてきたのも、恐らく本題はこれである。
次に来る機会があれば、紫苑の召し物でも土産にすれば喜ぶやも知れないと、雅々は密かに笑みを浮かべた。

「安心してよ、俺と紫苑は友達だから」
「せやからちゃう言うてるやろっ!!」
「君らいつの間に意気投合してんの。夕餉の準備出来たから雅々ちゃんもおよばれしてき」

荒魂に呼ばれ、出発前に紫苑から耳に胼胝が出来る程聞かされた言葉を思い出す。
鬼に物を献上する、盃交わす、これらは鬼への忠誠と見なされる―――

「えっと、ここは大江山だから郷に入れば郷に従うけど…人肉はもう食べないし、盃は交わさないよ?」
「なんや、残念やなぁ。その言い草から察するに、紫苑の知恵やね」
「は!?何やて!?」
「(バレてた)」
「そりゃバレるて」
「うわ、いくしま君!心読まないでよ!」
「烏帽子はそれが仕事やからね~っ☆」

「口直しに喰うでー!」
「なんどいや雀槍」
「明日も遠征あるん忘れたらあかんで」

「―――さて、宴やよ」

こうして、荒魂の手を打つ合図とともに鬼達の長い夜が始まるのである。
丑の刻には、可愛い妹分を心配し、痺れを切らして迎えにやってきた紫苑や結の乱入によって更に騒がしさを増す事になるのだが、それはまた別の話―――。

 

―完―


※風味絶佳(フウミゼッカ)…味が非常にすぐれているさま。


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控え目に言って最高っす!
何より思うのが泉ちゃんはやっぱりうちのメンツのこと超分かってくれてるってことよ!!
うちのに関する説明や描写も、まさにそれそれ!って感じで、私より私の言いたいことを言わせてやりたいことをやらせてくれてる感じ。うちのやつらが…生きてる…!!(?)

ちょこちょこ雅々の回想が入るのがまたいい。その回想で紫苑くん結ちゃんに愛されている描写が最高。あったかい。じんわり泣けてくる。私も手を握られたいんですが。←
大作をありがとうございました!!!!!!

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自分からウェイウェイ絡みに出て行くことはほぼありませんが、おしゃべりするのは大好きです!絡んでもらえると踊り出してゆきます^o^

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